やつがしら v2
ローマ字入力を使いやすくするための新しいキー配列案。 AZIK に限界を感じた私がその次に目指すもの。
2003/05/17 初版
2003/07/10 凍結
- 左手に子音、右手に母音を配置した交互打鍵指向の配列です。
Dvorak や SKY 配列などと同じ発想です。現にローマ字入力を使っていて、 QWERTY 配列に不満を感じている人を対象とします。
- 「や」「ゆ」「よ」を母音として扱います。
日本語の音韻を8母音体系に整理しなおしました。拗音を含むほとんどの読みが「1音節=2ストローク」のシンプルな規則で入力できます*1。きゅうり*2や和ならべと同じ発想です。
- 二重母音の打ちやすさに配慮しています。
ai, ei, ou, you など、よく使われる二重母音がアルペジオ打鍵*3で入力できるように母音キーを配置しました。 M 式や AZIK のような専用キーは用意していません*4。
- QWERTY 配列との親和性を重視しています。
子音・母音ともなるべく QWERTY と同じ指(または対称位置の指)を使うようにし、連想効果で学習コストを抑えました。 QWERTY による英字入力との併用を意図しています。 QWERTY からの移行も比較的ハードルが低いでしょう。
- ローマ字カスタマイズだけで実装されます。常駐ソフトなどは必要ありません。
- *1
- 母音は1ストロークです。その他、例外的に3ストロークの外来音があります。
- *2
- 名前はこちらの投稿で明かされています。
- *3
- 近接する複数のキーを、片手の複数の指を使って立て続けに打つこと。「タタッ」って感じで。
- *4
- リズムが乱れる原因になるため、あえて採用しませんでした。
Version 2.1 (2003/06/20)
音 | |
a | i | u | e | o | ya | yu | yo |
キー |
[ J ] | [ I ] | [ K ] | [ O ] | [ L ] | [ Y ] | [ H ] | [ N ] |
清音 |
| |
あ | い | う | え | お | | | |
K | [ D ] |
か | き | く | け | こ | きゃ | きゅ | きょ |
S/Sh | [ S ] |
さ | し | す | せ | そ | しゃ | しゅ | しょ |
T/Ch | [ F ] |
た | ち | つ | て | と | ちゃ | ちゅ | ちょ |
N | [ A ] |
な | に | ぬ | ね | の | にゃ | にゅ | にょ |
H | [ W ] |
は | ひ | ふ | へ | ほ | ひゃ | ひゅ | ひょ |
M | [ V ] |
ま | み | む | め | も | みゃ | みゅ | みょ |
Y | [ R ] |
や | ゐ | ゆ | ゑ | よ | | | |
R | [ E ] |
ら | り | る | れ | ろ | りゃ | りゅ | りょ |
濁音 |
G | [ G ] |
が | ぎ | ぐ | げ | ご | ぎゃ | ぎゅ | ぎょ |
Z/D | [ C ] |
だ | じ | ず | で | ど | じゃ | じゅ | じょ |
D/Z | [ Z ] |
ざ | ぢ | づ | ぜ | ぞ | ぢゃ | ぢゅ | ぢょ |
B | [ B ] |
ば | び | ぶ | べ | ぼ | びゃ | びゅ | びょ |
P | [ Q ] |
ぱ | ぴ | ぷ | ぺ | ぽ | ぴゃ | ぴゅ | ぴょ |
小文字 | [ M ] |
ぁ | ぃ | ぅ | ぇ | ぉ | ゃ | ゅ | ょ |
外来音 |
F | [ T ] |
ファ | フィ | フ | フェ | フォ | フャ | フュ | フョ |
V | [ TW ] |
ヴァ | ヴィ | ヴ | ヴェ | ヴォ | ヴャ | ヴュ | ヴョ |
W | [ X ] |
わ | ウィ | | ウェ | ウォ | | | |
T | [ FW ] |
| ティ | トゥ | | | | テュ | |
D | [ CW ] |
| ディ | ドゥ | | | | デュ | |
|
W |
[ P ] | を |
撥音 | [ ; ] | ん |
促音 | [ U ] | っ |
長音 | [ - ] | ー |
|
→ 扉ページ にまとめました。
本仕様の策定にあたっては多くの先行研究を参考にさせていただきました。結果として先行仕様と似通った部分もありますが、いちおう本仕様は独自考案であることを主張しておきます。
やつがしら v1.2 より引き継ぎ。
2003/05/17
- 3か月経過。 QWERTY と同じくらいのスピードで打てるようになった。
- やっぱり左手は上下、右手は左右の動きが大きい。これは良くない。
- 左手下段 G, D の使用頻度が高い。
- 右手上段 yu, yo の使用頻度はかなり低い。
- 「えっ」が右手小指の連続になり、うざい。
- 左手は下段がひどく打ちにくいため、打ちやすいキーの数が子音の数に比べて少ない。左右を逆にするか、使用頻度の高い子音キーを減らすなどの工夫が必要。
- 就職活動をしてて思った。自分も1年後には強制的に QWERTY を使わされるハメになるんじゃないか? 現に QWERTY で英文打ってるとき u, i, o の位置を間違えたりしてるぞ? 習熟期間を考えるとそろそろ QWERTY に戻した方がいいかも?
2003/05/17
自分の書いた文章で頻度解析を行なった。
- 母集団は2001年1月〜2003年4月の間に自分が送信したメールの本文。
- 引用部分、署名、自分の名前、所属団体名は除外。解析対象 650 KB (英文含む)。
- kakasi でカナに逆変換し、出現回数をカウントする。
結果:
| a | i | u | e | o | ya | yu | yo | 合計 |
| 3336 | 16189 | 13789 | 1997 | 4340 | 1522 | 584 | 2618 | 44375 |
K | 8847 | 4996 | 6537 | 3099 | 4836 | 77 | 340 | 643 | 29375 |
S | 3696 | 8918 | 6643 | 2541 | 2684 | 488 | 717 | 1237 | 26924 |
T | 7401 | 2006 | 4075 | 6378 | 7244 | 294 | 232 | 355 | 27985 |
N | 5712 | 5503 | 68 | 1511 | 6875 | 39 | 372 | 4 | 20084 |
H | 5048 | 900 | 1165 | 655 | 1351 | 1 | 7 | 141 | 9268 |
M | 6892 | 1733 | 607 | 1662 | 3825 | 7 | 17 | 24 | 14767 |
R | 4117 | 3584 | 3707 | 2890 | 1658 | 35 | 39 | 673 | 16703 |
W | 2051 | 3 | | 3 | 2713 | | | | 4770 |
G | 4827 | 558 | 490 | 573 | 2186 | 20 | 1 | 351 | 9006 |
Z | 629 | 1872 | 638 | 413 | 322 | 340 | 391 | 690 | 5295 |
D | 3744 | 5 | 121 | 6291 | 2371 | 0 | 2 | 1 | 12535 |
B | 1649 | 734 | 1090 | 321 | 436 | 0 | 8 | 25 | 4263 |
P | 417 | 157 | 374 | 199 | 283 | 0 | 6 | 15 | 1451 |
小文字 | 129 | 16 | 37 | 96 | 20 | 1 | 2 | 2 | 303 |
F | 126 | 17 | | 12 | 59 | 0 | 0 | 0 | 214 |
V | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 |
合計 | 58622 | 47191 | 39341 | 28641 | 41204 | 2824 | 2718 | 6779 | 227320 |
|
|
日本語入力の目的はほとんどがメール書きなので、この統計は利用実態にかなり近い。メール文らしい特徴も見られる。
- ア行では「い」「う」が桁違いに多い。
- ア行以外では a と o が多い。
- ヤ行/拗音の中では yo が多い。
- 濁音の中で「で」が頭ひとつ多いのは、「で」(助詞)のほかに「です」が頻出するから?
- 「にゅ」「りょ」が有意に多いけど、「入力」なんてそんなに書いたっけ?
- ザ行とダ行に注目! ダ行は a, e, o が多く、ザ行は a, u, e, o が少ない。ちょうど山と谷が打ち消しあうので、次のように組み替えれば使用頻度の高い子音キーを1個にまとめることが可能。
Z | だ 3744 | じ 1872 | ず 638 | で 6291 | ど 2371 | じゃ 340 | じゅ 391 | じょ 690 | 計 14919 |
D | ざ 629 | ぢ 5 | づ 121 | ぜ 413 | ぞ 322 | ぢゃ 0 | ぢゅ 2 | ぢょ 1 | 計 2911 |
2003/05/19
解析結果を踏まえて新バージョンを策定。
- もっと QWERTY に近く! 目指すは「悪くない QWERTY」。
- u, i, o, R, G を QWERTY と同じ位置へ。
- ほかのキーもなるべく QWERTY と同じ指、同じ段へ。
- 子音キーを打ちやすい位置に集約。
- ザ行とダ行を組み替え、使用頻度の低い「ざぢづぜぞ」を打ちにくい位置へ。
- 「を」を母音扱いとすることで W の使用を減らし、打ちにくい位置へ。
- 母音キーは頻出パターンの打ちやすさを重視。
- 二重母音はアルペジオ打鍵が可能なように。(yuu は不可能だが、出現頻度を調べたら you の 1/3 程度と少なかった。人差し指と中指で打ってもいいし)
- 撥音は専用キー an, in, un, en, on を用意し、「ん」単独の使用を減らす。
- 「を」「っ」「ー」は単語内の音便とかに影響されずランダムに現れるので、どの指からも続けて打ちやすい小指に配置。
2003/06/20
ダメだこりゃ。
- 母音の配置に無理がありすぎ。 yuu とか you なんて指が覚えてくれないし、「よ」がホームポジションにあるのもしっくりこない。
- 「あん」「ゆん」が人差し指の連続になる。撥音専用キーがあっても「母音+ん」では使えないから、「ん」はどの指からでも続けて打てる小指に置くべき。
- R を打つストレスが大きい。 [ R ] はもっと使用頻度の低いキーに割り当てるべき。
そもそも [ R ] や [ T ] が [ U ] に比べて(似たような位置関係なのに)格段に打ちにくいのはなぜだろう。右手の人差し指を伸ばした位置には [ U ] があるのに対し、左手の人差し指を伸ばした位置は [ R ] と [ T ] の隙間だからか。
というわけで、母音を和ならべと同じにしてみた。
- 互換性を無視して考えると、母音配列は和ならべが最も合理的。打ちやすい位置に5母音が固まってて、二重母音 ai, ei, ou, yuu, you がすべてアルペジオ打鍵可能。これをちょっと試してみよう。
- ATOK14 のローマ字カスタマイズでは [ N ], [ M ] の単独打鍵にはカナを割り当てられないので、 ya, yu, yo は第2ストローク専用とし、「や」「ゆ」「よ」の入力用に [ Y ] を設けた。
やつがしら v3 へ引き継ぎ。